Gretsch 6120SSU 深淵を覗く時
「深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ」ニーチェの格言です。いや、別に全く詳しく無いですよ。でも妙な説得力がありますよね。ニーチェのいう深淵は心の闇でしょう。ではオレギ。の深淵とは。。。アレ?そんなブログ?マサトミです。
それでは、前回の続きで6120SSUの配線改造を行います。
上の写真は改造後です。当たり前ですが、見た目は変わらないですね。改造レシピは基本的に6120ー60と同じで、SW、ボリューム、ジャック交換、配線材交換、HS FT実装、HOTROD配線です。今回トレッスルブレーシングもどきは見送りです。実はトレッスル用にスプルース材を用意してありますが、大変ですからね。次の機会にじっくりやろうかと。
0.内部配線材
✴️先に言っておきますが、配線材の変更で間違いなく出音は変わります。ですが、魔法のように音が良くなるわけではありません。比較した聴感上の違いを文章にしますが、定量的に数値化は不可能であり、全て主観です。ご容赦ください。
ギター本体の改造の前に、内部配線材の検討を行います。6120ー60ではベルデン8503を撚って使いました。ベルデンはハリのある明るい音になったと思います。良いと思ってますが、弦を触っていない時のノイズが大きい気がします。撚りを強くすればいいかもしれませんが、耐ノイズだけならオリジナルのシールド線のほうが上かなと。なので、今回はシールド線にしようと思います。
左下は同じベルデン8503(AWG22)撚り線、上は平河ヒューテック製HC-3L1(0.3sq1芯横巻シールド線)、右下はMontreux製Vintage Braided Wire(AWG22)です。ギター内部配線用のシールド線は専用の物であまり良さげな物が見当たりません。ヴィンテージのGretschの内部配線は被覆がグレーだったという情報を見たことがあり、色だけでも真似してみようかと検索したところ、上のHC-3L1がオヤイデ電気さんで買えるようです。「卓内配線用」だそうな。卓って卓?そんな用途ある?まあ日本メーカーなので信頼性に一票で。また、右下のBraided WireはヴィンテージのGibsonで使われていたタイプですね。他のギターで使ったことがあり、音だけでなく、作業性も気に入っています。見た目もいかにもヴィンテージ風でカッコいいし。ちなみにサウンドハウスさんで購入できます。(サウンドハウスさん、大変お世話になってます。これからもよろしくお願いします(笑)。)
この3種で比較してみます。
比較といえばこれ、
★Hook-Up Wire Select System★
しつこいですか(笑)。お馴染みワニ口クリップです。
ピックアップの配線をfホールから出して、ワニ口クリップを接続。
ジャックにワニ口クリップを半田付け。この2つの間に各線材を接続します。各線材の長さは3種とも約1mです。実際のギター内部配線はセレクトSW→マスターボリューム→ジャックなので、大体1mぐらいです。
いざ、比較!ジャカジャーン。。。って、いやこれわかんないでしょ(笑)。何度も交換してようやく、何となく、傾向が見えてきました。
・ベルデン8503:音は気に入っているので、これを基準としてコメント割愛。
・平河HC-3L1:特に可もなく不可もなく。ベルデンよりはちょっと大人しいかな?
・Braided Wire:音が太い。上2種に低音を加算しているような感じがします。
芯線の太さは同じぐらいですが、音には少し差が出ます。USA製のベルデンとBraided WireはAWG30×7本=AWG22ですが、日本の平河HC-3L1は0.18sq×12本=0.3sqです。定かでないですが、この構造の違いでしょうか?
シールド線にすることは決めてるので、同じ平河の違うケーブルを試してみることにしました。「気がする」程度の違いでしかありません。HC-3L1だけ聞いてれば、これでいい気もするので、試して違いが聞き取れなければ、線の太さや硬さで決めます。
オヤイデ電気さんで太さ違い、構造違い品を再購入です。数メートルずつなので大した金額ではないです。
左から
HC-5L1:0.5sq (0.18sq×19本)、横巻シールド、外径2.5mm
HC-3B1:0.3sq (0.18sq×12本)、編組シールド、ドレインワイヤーあり、外径2.9mm
HC-3L1:0.3sq (0.18sq×12本)、横巻シールド、外径2.0mm
シールドの横巻は線を綺麗に並べて巻いてある物、編組は網状に組んである物です。仕上がり径は上記の通りで、横巻の方が比較的柔らかいです。
HC-5B1というのも購入しましたが、外径3.7mmでいかにも太く、とりあえず保留。
さあ聞いてみましょう。しつこいようですが、ぱっと聞いて判るほどの違いはありません。「だったらどれでもいーじゃん」とか言わない!何度も交換して聞き比べです。これはこれで楽しい作業ですよ。また「プラシーボ効果ではない!」と断言できる自信もないです(笑)。
HC-5L1:太い音な気がします。Braided Wireに近づいたような。
HC-3B1:HC-3L1の雑味を抑えたような感じかな。悪くいえばより大人しい音。
HC-3L1:この3種の比較では、比較的細くてちょっと荒れた感じがします。うまく表現できません。良くいえば開放的、悪くいえば雑というか。
ここではたと気がつきます。命題である「Gretschらしい音」としてはどうかと。この観点で、HC-5L1やBraided Wireはちょっと太すぎる気がします。低音が出過ぎるというか。バランスとしてはやっぱり0.3sq のどちらかですかね。ここで大いに迷いまくった結果、HS FTのちょっと元気なところを抑える効果を期待して、HC-3B1を採用することにしました!パチパチパチパチ。疲れた。
所謂「いい音」とすれば、太いほうが良いのでしょうが、得意の「いい感じ」という感性に従うことにしました。いいんですよ、「オレのギター」なんだから。。。
ギター外部シールドも念のため長い物も用意しました。細い線を選択したのでシールド長くしたらもっと細い音になるなら不味いと思って確認です。これは大丈夫でした。
一連の作業で「エレキギターの音とは?」と色々と考えさせられることがありました。長くなるので、これはまた別の記事にしたいと思います。
それでは本題の改造を進めます。
1.配線外し
一旦配線を全部外します。
VA FTフロントピックアップです。リアと同じ形状です。詳しくは1つ前の記事を。
これはトーンSWです。横型でした。
全部外したところ。 全てミリ規格品です。
ピックアップセレクトSWとトーンSWです。トーンSWは6120ー60の箱型と違って横型です。コンデンサは473k(0.047μF)と223k(0.022μF)、安価なマイラコンデンサです。6120ー60と違って同じシリーズの容量違いですね。
ボリュームポットは全部同じですね。Bカーブの500kΩです。 6120ー60の記事で、「後にBカーブと判明」と書いたのはこのことです。6120ー60はAカーブ品をつけたのですが、ボリュームをフルから絞る時に、少し回したところでかなり音が小さくなり使いにくいです。これはBカーブが正解でしょうね。
比較写真が無いですが、6120ー60やCTSよりも小型のポットです。広大なスペースがあるのに何故か小型。推定理由は後ほど。
ジャックです。これは6120ー60と同じかと。
トレッスルを追加する時の参考に、ブリッジあたりの内寸を測ってみました。6120ー60より深いです。当たり前ですね。
2.ブリッジ台座のすり合わせ
今回はブリッジ台座のすり合わせをしてみました。Webで見かける調整ですね。紙ヤスリをボディに貼って、台座底面のカーブをボディカーブに近づくように削ります。写真ではずいぶん削っているように見えますが、表面を少し削っている程度です。
これで台座底面がトゥルットゥルになりました。スベスベで触ると気持ちいいです(笑)。すり合わせ前はミクロに見ると木の表面はデコボコしてるはずです。ボディの表面もウレタン塗装でツルツルなので、ボディカーブに台座全体を合わせる効果よりも、ブリッジポール真下辺りを滑らかにして密着させる効果の方があるような気がします。ちなみにブリッジはGotoh製ですね。
3.内部配線製作
ピックアップセレクトSWです。6120ー60と同じ、というか改造品から移植のミリ規格品です。アースワイヤを3本半田付けしています。本来ピックアップ2つとマスターボリュームへの配線のアース線3本をまとめて半田付けします。しかし、後から何かしようとする時にものすごくやりにくいんですね。1本を付け外ししようとしてハンダゴテで温めた時に、そのままにしたい配線が取れたり。
なので、各配線のアースを別々に半田付けできるようにこの方法にしました。これだと、他のアース線の半田が溶けるほどの熱は伝わりません。
はい!ズバッと端折って配線完成です。ミリ規格SW、ミリ規格CTSポット、スイッチクラフトジャックL11です。HS FTから出てる細い線も変えようかと考えてました(元々それもあって細めのHC-3L1を最初に選んでました)が、これは思うところがあり、そのままにしました。6120ー60の時同様リア側は延長しています。延長線のベルデンは撚りを強くして、やり直しました。
SW-ポット間はちょっとピッタリ過ぎで余力無しになってしまいました。まぁやり直すほどではないかと。
4.配線戻し
それでは取り付けていきます。。。と初手から予想外の問題が。何とマスターボリュームポットが通りません。ミリ規格品でも小型の物は首がちょっと細いようです。そこまでピッタリの穴にしなくても。。。仕方なくちょっと穴を広げます。
ピックアップですが、ここで次の問題。 よ〜く見るとリア側が傾いていて、右側がちょっと低いです。これは実は6120ー60も同じでした。穴あけの治具が共通だったのでしょうか?エスカッションがつくと目立たないのですが、こうして見るとわかりますね。
これを治しましょう。
爪楊枝にボンドをつけて挿して乾燥待ち→カットして彫刻刀等で更に平らにする→マジックで位置マーク
→マークにキリでアタリの穴開け
ここの穴は貫通させないように、ドリルに深さ決め用のマスキングテープを貼ってます。
→慎重に垂直に穴あけして完了です。 元々ちょっと合ってなかったピックアップの位置修正に合わせてエスカッションの穴も開け直しているわけですが、ピックアップキャビティとエスカッション穴、無意味に近すぎ。。。1回失敗してやり直しました(笑)。
ピックアップの高さ調整はスポンジと木片の複合にしました。
フロント:4mmスポンジ+2mm厚木片
リア:4mmスポンジ×2枚+HS FTベースプレートに2mm厚木片
真ん中で分割しているのはネジの逃げです。スポンジ復活は以下の理由です。
・木片だとバネ性がどこにも無い。ネジの締め付け具合に不安。ボディ振動もそのまま伝わる?
・リア側は淵で接しているのが気持ち悪い。面になるようにピックアップ側に木片。
・木片のみの効果がソリッドすぎる気がする。柔らかさも欲しい。
まぁバランスが大事かなと。
フロント(ネック)
リア(ブリッジ)
リア側の高さです。。。ここで、前回のVA FTとの比較での重大なミスが判明します。「そもそもFTの最適な高さは?」と検索していると、TV Jonesさんのホームページに調整値の記載が!上の写真のようにカバー上面から弦が、フロント:5mmぐらい、リア:4mmぐらいを推奨しているようです。。。これ、結構高いです。かなり弦に近い。この位置にできるように、スポンジと木片の厚みを調整しました。
ミスというのは、6120SSUについてたVA FTは抵抗値4kΩ程度と出力低めです。比較はHS FTとの入れ替えなので木片の高さは同じでしたが、これが間違い。同じ高さだと、カバーの厚みによってVA FTの方が低くなります。公平に比較するならば、これは一緒にしないといけませんでした。若干ウォームだったのはこのためかもしれません。
。。。ま、やり直しませんけどね、面倒なので(笑)。次の機会への課題ということで。
ジャックとビグスビーに接触させるアース線をfホールから出して、半田付け。
チューブでジャック穴通します。
表からナット止めして完成です。 アレ?今回ジャック穴は広げてない気がする。
右下ボリューム2個は使用しませんが、ダミーのミリ規格CTSポットをつけます。と、ここでまたしても問題が。このfホール、何と狭くてCTSポットが通りません。6120ー60の方がfホールがちょっと広く、CTSポットが通せましたが、6120SSUは無理。元々ついてたポットが何故小型なのか疑問でしたが、このためかも。小型ポットは通せます。
仕方なく、このためにリアピックアップを一度外しました。ちなみにマスターボリュームと同じく穴をちょっと広げてます。
5.おまけ1 エスカッション交換
ヒビの入っていたエスカッションは新品に交換しました。20年の歳月のせいか、色目がちょっと違います。古い方はいかにもゴールドな色ですが、新しい方は。。う〜ん何色と言えばいいでしょう?悪くは無いので揃えるためにフロント、リア両方変えました。
6.おまけ2 ビグスビーのスプリング交換
なんだかよくわからない写真になってしまいましたが、上がこの6120SSU購入時についてたスプリングです。多分ロングタイプに交換されています。これを標準長さの物に交換しました。また、写真右の白いワッシャは無くなっていると思って購入しましたが、スプリングの上側に入れてありました。
このワッシャの位置は正解がわかりません(なんかそういうの多いな)。検索してみると、上派、下派、なんと両方派と自由です(笑)。マサトミは下派に一票。カップ状にスプリングの受けになってますが、ちょっと狭く座りが悪い。アーミング後スプリングが戻る時に安定しない気がします。ワッシャを入れると浅くなりますが、平面は出るので、こちらの方が安定するのではないかと。
交換前(ロングスプリング+上ワッシャ)はアーミングすると必ずチューニングが少し上にずれていました。交換後(標準スプリング+下ワッシャ)はアーミングしてもずれなくなりました。これで様子見です。
完成です!虎目を楽しむためにピックガードは外しておきます。外してわかりましたが、前の所有者様も外していたようです。最初は戸惑った色も含めて、今は結構お気に入りです。気になるアイツをだんだん好きになる系の恋のようですね。ハリケーンではなかったです(笑)。
音も満足してます。ちょっと元気なGretschですね。次はトレッスルブレーシングもどきですかね〜。でもしばらくこのままでもいいかも。
次の記事は何にしようかな。実はGretsch以外のギターネタもあるんですが、6120ー60〜6120SSUを早く書きたくて連投しました。
それではまた次回。
※ご紹介したギターの改造はなんらお勧めするものではありません。ご自身のギターの改造はくれぐれも自己責任でお願いいたします。