オレギ。

オレのギターを弄るブログ。

Gretsch 6120-60 オレンジ色のアイツ

マサトミです。ロックンローラーのギターは塗りつぶしカラーでないといけないという不文律があるそうです。サンバーストやナチュラル木目はご法度、6120の透けたオレンジはギリOKだそうな。エディ・コクランさんがいなければこれもNGだったかもしれませんね。

 

 Gretschで最初に購入したのはこの6120-60です。

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92年製ですね。6120-60としてはかなり初期型だと思います。当時は某地方都市在住の学生でした。もう言うまでも無いですがStray Catsコピーバンドをやってました。楽器屋は割とあったほうだと思いますが、Gretschのギターは今ほど出回ってなくて実物はほとんど見かけることが無かったと思います。

うろ覚えですが、たまたま入った中古楽器店(だったかな?)で新古品として発見、一週間ぐらい悩んでローンで(笑)買いました。20万ぐらいだったと記憶してます。定価は30万ぐらいだったかな?

情報箇条書き

Gretschの日本での生産開始は1989年から。

・当初から6120 Nashvilleというモデルもあり。

・色:6120ー60はWestern Maple Stain(オレンジが経年で赤が抜けて黄色が強くなった状態を再現)、6120は濃いオレンジ。

・ボディシェイプ:6120ー60はヴィンテージの6120に近づけており、特にカッタウェイの深さが違う。6120はカッタウェイが浅くて、ボディのクビれも浅い。

・ピックアップ:どちらも当時のFilterTron(セラミックマグネット)

・ブレーシング:どちらもパラレルブレーシング(ブリッジ下に柱1本)

・当時ヴィンテージ・リイシューのようなモデルは無く、6120ー60が最初だったはず。

とりあえず見た目から入るので、色とボディシェイプが決定的でしたね。特に色は現行モデル含めても今でも一番好きです。ウレタンなのでピカピカで輝くようなオレンジ、ゴールデンオレンジって感じです。いいのよウレタンで。ラッカーとは気楽さが違います。

この時は音は2の次でしたね。Brian Setzerさんと同じような音が出たらラッキー、みたいな。今と違って何しろ情報が無いので、音色を真似することにはそれほど拘ってなかったですね。諦めてたというか。

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ヘッドです。虎目が綺麗ですね。この後、タイミングは判りませんが、ヴィンテージに近づくようにより濃い色に変更しているようです。 

ゼロフレットがあります。

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 ブリッジはスペースコントロールブリッジです。トーンはヴィンテージモデルらしくスイッチ切り替えです。

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真横から。このアングルの写真は珍しいのでは?f:id:MASATOMI:20200531182056j:plain

背面です。ネックは太めでちょっと角を感じるカマボコ型の所謂Uシェイプだと思います。(Uはこんな感じ、Cはこんな感じと確信があるわけでは無いので、違うかもしれません。)ボディとの接着部の背面に見えてる断面(?)がこの頃は全モデルこんな感じでヴィンテージや現行とは違いました。握った感じはメイプルの硬さもあって「ガッチリ」で、手の小さい私には弾きづらい反面、「ネック反り?何それ、美味しいの?」と言わんばかりの安心感があります。

 

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重さは3.6kgぐらい。現行で3.3kg前後の個体があるようなので、ちょっと重め。数値以上にずっしり感はあります。

ここから内部です。

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配線をごっそり外すとこうなります。各パーツは表から外して内部に落として、最後にどちらかのピックアップ取り付け穴から全てを引きずり出します。

外すのはいいんですが、戻すのは大変なので、自信のない方は真似しないでください(笑)。

線材は全てシールド線で芯線は推定AWG24(0.2sq)程度です。ギターの内部配線はAWG22(0.3sq)がスタンダードのようですので、そんなに太くは無いですがギター内部配線の単芯シールド線としては普通だと思います。シールド含む外皮径は太く見えますが、外皮が何というかポコポコした感触の軽くて厚い樹脂です。これはギター内部でコツコツ音がしないようにこの素材の物を採用しているのかもしれません。

ピックアップはFilterTronです。

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リア側の抵抗値は7.7kΩぐらい。フロントは撮り忘れですが同じぐらいでしょう。TV JonesさんのTV  Classicが4kΩ前後ですので高め(巻数多め)ですね。
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6114Aのとこでも書きましたがFilterTron内部の各部品の細部はともかく構造は昔から変わっていませんが、この頃はマグネットがセラミックです。高めの抵抗値と合わせて、結果ハムバッカーに近いパワーのある音がします。

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元々ついてるピックアップ・セレクター・スイッチです。よくあるミリ規格のSWですね。

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トーン・スイッチです。センターオープンだからでしょうか?箱型です。

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223(0.022μF) 

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473(0.047μF)  容量違いでなく違うコンデンサなのは何か意味があるのでしょうか?

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POTです。SWと同じくミリ規格品です。CTSではありません。500kΩのようですがAタイプBタイプが書かれていません。これは後々わかるのですが、恐らくBタイプです。

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ジャックと弦アース用の線です。ジャックは他と同じくこれもミリ規格品です。

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アース用の線はボディ下部のビグスビー取り付け穴近くから出してビグスビーに接触させています。

 ここからはギター本体側です。

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黒いのはピックアップ高さ調整用スポンジです。ブレーシングでわかりづらいですが下が空間になってるところで純粋なトップの断面がわかります。確か5プライの合板だったはず。当時はそこまで情報公開してなかったかもしれません。

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リア(ブリッジ)側ピックアップ取り付け穴からネック方向を撮った写真です。写真の真ん中ハイポジション指板下に当たる箇所に合板のブロック状のパーツがあります。これはネック端ではありません。

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フロント(ネック)側からブリッジ方向を撮った写真です。28年の時を経て初めて繁々と見ました。柱の上側ブリッジ下に結構大きいブロックが入ってますね!?

現行のヴィンテージモデルにはみんな大好きトレッスルブレーシングが入ってますが、トップの板厚含めてこの構造だとそんなに変わんないような気も。。。?

 

★6120ー60の音

オールメイプルで5プライの板厚と太めのネックにパワーのあるピックアップとの組み合わせは、イメージするGretschの音よりもグッとパワーのある音で、これはこれでいいギターだと思います!あえてこの時代のGretschを使用するのもアリですね。課題はそれがGretschである必要があるか、ということでしょうか。

今でこそ「Gretschさん、何でそんなチューニングに?」と思うでしょうが、70年代の米国製末期のGretschからの流れ、当時求められたハードロック/メタル等のパワーのあるギターサウンドの需要など、マーケティング的な判断もあったのではないかと思います。まぁヴィンテージGretschの検証不足の可能性も否定はできませんが。

さて6114Aで再開したギター弄り、最初に確認したのは「6120ー60は本当にGretschらしい音は出ないのか?」でした。Brian Setzerさんの音でなくとも、そこそこでいいです。

あくまで手持ち機材の範囲ですが

・高音側はアンプセッティングやローランドスペースエコー(手持ちはREー201)を通すプリアンプ効果でそれっぽくはなりそう。というか悪くない。

・低音側のパワー感、悪く言えばブーミーなところは抑えたいが補整が難しい。

こんな感じです。

 

でまぁ弄るわけですよ。

 

1.内部配線の交換とHot Rod配線

狙いは低音をよりスッキリさせることです。

・トーンを使わない所謂Hot Rod配線に。

・POTはSCUDから出てるミリ規格のCTS500kΩAカーブに←後にBカーブと判明。

・SWはスイッチクラフトにしたかったのですがミリ規格同等品に。

・ジャックはスイッチクラフトに。

・配線材はベルデン8503(AWG22)をノイズ対策に撚り線にして使用。

ミリ規格の部品がついてるところにインチ規格のCTSやスイッチクラフトをつけようと思うと、ほんの少し穴が小さいんですね。直径で1mmぐらい。ボディ木部は極力削りたくなかったのと、外した配線はFilterTron以外はそのままキープしたかったので、上記のようなレシピになりました。

で、作成した内部配線がこちら。
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弦アース配線も先に付けてますが、これは無意味でした(笑、後ほど)。

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SWです。見た目はほぼ同じ。メーカーは存じませんが国産なのでしょうか?

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  POTとスイッチクラフトジャックです。ベルデンの撚りはちょっと甘かったかも。

 

2.なんちゃってトレッスル

効果あるのか?なんて言っておきながら、どうなるのか試してみました。ボワンとする箱鳴りを抑えてよりソリッドに近づければ、低音のブーミーさにも少しは効果があるのではないかと期待しました。

お試し感が強いので材料にはそんなに拘らず、「ファルカタ」というホームセンターで購入した木材を使いました。軽くて固めな叩くとカンカンした音のする木で、加工のし易さも音質も丁度いいかなと。長さ以外は購入した材料そのままのサイズです。

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元々の柱は残します。外した方が違いが出るでしょうが、元に戻せるように外すのは恐らく不可能なので。

追加の柱はちょうどブリッジの当たる真下を狙います。ほんの少し長めに切って、後はひたすら削ってははめてみて、を繰り返します。

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ジャック穴から撮ってます。。。ボディの写真もそうですが、Gretschの内部写真はワクワクしますね!大変参考にさせてもらってる某工房様のブログの言葉を借りると「俺、ここに住める!」です。物凄く気持ちがわかります!!

写真はスマホで撮ってますが、考えてみると92年頃なんてデジカメでさえ存在しないですからね。当たり前ですね、一般家庭にパソコンが無いし、そもそもパソコンという言葉も無かったのでは?まだバリバリフィルムの時代でお手軽写真は「写ルンです」ですよ。

閑話休題。オジサンの昔話は長くなるのでこのぐらいに。で少しづつ削りながら、弦の張ってない状態で丁度はまるぐらいを狙います。弦を張ると抑えになって接着不要になるのを期待してます。と、文章にすると簡単そうですが、数時間かかりました!!削りすぎると始めからなので慎重になりますよ。

 

3.ピックアップ位置調整

分解するときは

・ピックガードを外す。

エスカッション(ピックアップ周辺のパーツ。穴隠しの飾りです)を外す。

・ピックアップを外す。

この順番です。外す時から嫌な予感はしてましたが、逆の手順で元に戻そうとすると何と付かない。。。それぞれのパーツが少しづつ干渉していて、全部を同時に平均的にネジ締めしていけば強引に付きそうですが、なんとも気持ち悪いですね。

特にエスカッションは無理をすると割れてしまいそうです。なので気持ちよく正しい位置に取り付け穴を空け直すことにしました。

Webで検索すると日本の生産メーカである寺田楽器さんの様子を見ることができます。ギターの生産工程の最初の木材カットこそ機械ですがその後は思った以上に手作業です。これを工場として生産するのですから、まあ多少は強引なこともあるかなと。または、当時の穴あけ位置決め用治具がそもそもズレてたか。現行品はどうなんでしょ?

で、作業ですが。。。うっかり写真を撮り忘れました。手順は以下。

・元のネジ穴に木工ボンドをつけた爪楊枝を挿す→乾燥待ち

・乾いたら穴から出てる部分を平らにカット。彫刻刀使用。

・位置を取り直してドリルで下穴開け

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後は慎重にネジ締めするだけです。失敗してもやり直せるし、見えるところでは無いので落ち着いてやれば難しいことはないですね。

 

4.ピックアップ高さ調整

元はスポンジでしたが、木片を使って高さ調整しました。オーディオだとスピーカーを固く固定すると音も固くなります。感覚的にはピックアップも同じ効果が期待できそう。もちろん低音を引き締める狙いです。高音もより反応の良い出音になると思います。

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元のスポンジは上の写真のピックアップ配線にもかかっています。この配線を避けた形状で作成しました。材質は。。。何でしょうね(笑)。百均にあったアイスバーのような物をカットして削って。元がスポンジですし高さ調整用ですからね。拘りません。

 

5.配線を戻す

これがフルアコギター弄りの最大の醍醐味ではないでしょうか?戻していきます。どっちでもいいのでピックアップ穴のどちらかから全パーツを取り付けます。

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SWやマスターボリューム等のギターの上部のパーツはピックアップ穴に通す最初からチューブか糸で引っ張ってきます。この時、内側につける座金を忘れると結構泣けます。

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ギター下部のPOTやジャックは一旦Fホールから出す手もあります。Fホールから一旦出す時はピンセット等が使えます。ここからの作業は同じですが、距離が近くやり易いです。 

更に6120ー60はFホールがちょっと広いのでCTS製POTも通せました。ちなみに通せない機種もありますが、これはまた別の機会に。

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ジャック穴はリーマーという工具で少し穴を広げます。ネジ穴空け直しぐらいはガンガンやりますが、こういう不可逆な加工はちょっと緊張しますね。

ジャックを穴に通して、弦アース線をビグスビーのところに出せば。。。ってどうやって!?。。。これは先に配線できないのですね。弦アース線をビグスビー側からFホールに通してそこでジャックに半田付けした後で、ジャックを取り付けるという手順が正しいです。

スイッチクラフトのジャックは最初「11」をつけようとしたのですが、ボディから出るナットの止めしろがギリギリです。ロングタイプの「L11」にして内側座金で調整が無難ですね。

 

★6120ー60の音 改造後

まずは生音で。。。

気になるのはトレッスルもどきの効果だと思います。ガッチリした作りに多少ブレーシングを加えてもあまり効果ないのではと予想してましたが、結構変わります。トレッスルブレーシングはソリッドに近づいてサスティンが延びると言われています。このトレッスルもどきもサスティンは延びますが、よく聴くと(よく観察すると)ボディの反響音が弦振動まで戻ってくるような延び方のようです。大音量だとハウリングしないか?という心配はありますが、ボディ反響は多少抑えられて、ピッキングに対する反応も良くなったように思います。生音で弾くには気持ちいい音で、とりあえずいい感じです。

次はエレキ音ですが。。。

全体に固いコツコツした感触の音に変わりました。多少ソリッド感も強まり狙った方向性は合ってます。これはこれでいい感じです。ですが、んー、やっぱりまだ低音が強い。。。そりゃ基本的な部分は変わってないですからね。これ以上はピックアップの交換でしょうか。。。定番のTV Jonesか。。。高いんだよなぁ。

 

悩みつつ今回はここまでです。それではまた次回。

※ご紹介したギターの改造はなんらお勧めするものではありません。ご自身のギターの改造はくれぐれも自己責任でお願いいたします。